どうして、クリの木などで家を建ててしまったのだろう。時間との戦いの中で私は、クリの木を構造材に選んだことを、後悔し始めていた。堅くて、重くて、加工しにくいクリの木は、すでに、職人を泣かせ、施主を泣かせ、建築家のTさんをも泣かせていた。最初から素直に吉野杉で家を建てていたら、私たちは、新居で正月を迎えることができただけでなく、建設費の追加負担にあわてることもなかった。Tさんに当たり散らすことも、棟梁や親方をせかせることもなかったかもしれない。
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しかも、すでにこれだけの負担を強いられているというのに、この先も、クリの木は、クリの木であるがゆえに、思いもよらないアクシデントを巻き起こすという。反ったり、ねじれたり、割れたりという行為をくり返し、新居に入った私たちを、悩ませ続けるのだろう。現場に行くと、私は、必ず、1本1本のクリの柱を見て回るようになっていた。たんねんに見ると必ずといっていいほど夜の間に、クリが暴れて、柱に亀裂が入っていた。それは、建物の構造に影響を与えているような亀裂ではなかったが、そうした柱を見つけるたびに、もしかしたら、取り返しがつかないことになってしまうかもしれないと恐れた。