不動産競売の開始決定に対しては、執行抗告(民事執行法10条)はできないが、競売手続上の瑕疵を理由とする執行異議(同法11条)だけではなく、実体上の理由をもって執行異議を申し立てることができるとされている同法182条)。競売開始決定がされた場合に、それが適式な手続を踏まずになされたものであるとき、たとえば、抵当権の実行通知をしてから1ヵ月を経過していないのに競売申立てがなされたようなときには、債務者または所有者は、民事執行法11条の異議事由に該当するとして、執行裁判所に異議の申立てができる。
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しかし、民事執行法は、競売開始決定に対する執行界議の申立てにおいては、手続上の瑕疵だけでなく抵当権の不存在または消滅を理由とすることかできるとした(同法182条)。これは、民事執行法が、買受人が代金を納付して不動産を取得したときは、抵当権が不存在であったり、消滅していても、買受人はその不動産を収得しうることを明らかにし同法11条)、不動産競売に、債務名義を必要とする強制競売と同じ効果を買受人に認めて、買受人の地位の安定を図ったことと関連する。すなわち、不動産競売の申立てには、債務名義を要求しない代わりに、抵当権の存在を立証させる法定文書の提出、を要求しているのである(同法181条2項)が執行裁判所は、このような法定文書の提出さえあれば、実体的な抵当権の存否について判断することなく、手続を開始することになる。それなのに、抵当権の実行に債務名義を要求していないことから、抵当権が不存在であったり、消滅したりしていても、請求異議の訴えなどの不服申立手続をとることができない。そのため、このような実体権についても、競売手続内で、執行異議という形で簡易に争うことができるようにしたのである。